きょうも東シナ海は快晴です。
ところで、深海から生き物を採ってくる場合、「生きてあがってくるの?」という素朴な疑問を誰もが持ちます。
大きな壁は水圧と水温です。
水圧の急変は魚類など体内に「気体」を持つ生物の場合、浮上とともに一気にふくれて致命的なのですが、エビカニなどの無脊椎動物の場合、それほど深刻でない場合もあります。
しかし、水温の方は問題です。
深海 3.5℃の世界から一気に水面の 30℃にさらされるのは、人間でいえば熱湯の中に落とされるようなものです。
何の措置もおこなわなかった場合、キャニスタ(採集生物がたまるケース)の中はぬるく温まり、生物の生存率は著しく下がってしまいます。
今回、これを打破するために工夫を講じました。
アイスノン(氷枕)をキャニスタ内に入れておくことと、深海から浮上する時にその入口に栓をしてもらうことです。
これだけで水揚げされたキャニスタの水は冷たく保たれ、生物も大部分が生きていました。
とりあえず万歳です。
この工夫の元祖は恐らく、元えのすいトリーター(現北里大学講師にして当館飼育アドバイザー)の三宅さんでしょう。昨年の伊是名海穴ですでにアイスノンを深海調査に取り入れていました。
恐らく今後は、「深海生物採集にアイスノン」は当たり前になることでしょう。
・・・ それにしても、たった数百円の日用品一つで、国の(といって良いでしょう)一大プロジェクトの結果が大きく左右されるというのもすごい話です。
[きょうの写真]
上/スラープガンの栓
下/何の変哲もないアイスノン
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)NT09-11「なつしま/ハイパードルフィン」による沖縄トラフ・伊平屋北熱水活動域及び鳩間海丘における深海調査航海
新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。