2009年11月30日

インド洋(9)航海日誌No.9 ~インド洋調査航海物語~

  • 期間:2009年11月2日~11月18日
  • 場所:インド洋
  • 目的:深海生物調査
  • 担当:根本


「ただ今より潜航終了まで風呂、シャワー、洗濯機の使用を禁止する」
船内アナウンスが鳴り響いた。
いよいよだ!インド洋最初の潜航が始まる!

しんかい6500は船の後部の格納庫にあり、それを船尾まで引き出して最後は釣りあげて海に投入する。
そのつり上げ金具の脱着は機械ではなく人間が行う仕組みとなっており、しんかい6500を引き揚げるときと水面で切り離す時の二回、人間がしんかい6500の上に登って作業を行うのだ。
海面でつり上げ金具を切り離す際、スイマーと呼ばれる2名がボートで近付き、ボートから海に飛び込んでしんかい6500に向かって泳ぎ這い上がって上がってゆくのだけれど、この時にサメに襲われる可能性があるそうなのだ。
そのため船外に排出される水にサメを寄せ付ける匂いの元を出さないために、風呂と洗濯は規制されるのだ。

アナウンスが入ったということは潜航できる可能性が高いということ。
天気は最高に良い!
問題はうねりだ。きょうはうねりがやや高い。
スイマーさんの安全のため絶対無理はできないのだ。

7時半ごろ、朝ご飯を食べ終えた研究者たちがヘルメットをかぶり、着々と準備が進むしんかい6500の周りに集まる。
写真を撮る人、研究の話をする人、じっとしんかい6500を見つめ何やら考えを巡らせる人などさまざま。

「スイマースタンバイ!スイマースタンバイ!」

このアナウンスでほぼ潜航決定になる。
潜航者はしんかい6500の運航チームとの最終打ち合わせを終えると、潜航服を着て潜航を待つ私たちの前に現れる。
スペースシャトルの打ち上げの時に宇宙飛行士が現れてくるのと、ちょっと規模は違うけれど似ている感じがする。
潜航者はみんなの期待を一手に引き受けて潜るのだ。
みんなでカメラを向けその雄姿を写真に収めエールを送る。
潜航者にとっては当然プレッシャーも大きいだろう。

潜航者がみんなの前を通りしんかい6500に乗り込み、船尾の方に引き出され「Aフレーム」というクレーンで持ち上げられて海に下ろされる。
その後つり上げ金具をスイマーさんが切り離したら、しんかい6500は浮力を得るために持っていた空気を抜き、クジラのように潮を吹きながら静かに自分の重さで海底まで沈んでゆく。

船に残された研究者は総合指令室へ集まり、しんかい6500から音波で10秒ごとに送られてくる静止画と現在の海底での位置を見比べ、どこで何をしているのかを観察することができる。
映像は音波でやってくるため鮮明ではなく、細かいものなどは分からないけれど水深数千メーターの画像がほぼリアルタイムで見られる。
この映像を見ながら各研究者は自分が切望するものらしきものが映るたびに
「あ!エビが!!」
とか
「お!鉄のマットらしきものが!!」

「あららフジツボでは!??」
など声をあげて食い入るように見ている。

今回の場所は熱水噴出域。しんかい6500から送られてくる画像には黒い熱水をモクモクはくブラックスモーカーがあり、その周りでは無数のエビがチムニーを覆い尽くしている。
このエビは私が学生の頃に研究テーマにしていたオハラエビというエビの仲間であり、私にとっては思い入れのある生物なのだ。

サンプリング作業を終えると夕方の5時頃、しんかい6500は1時間ほどかけて海底から採集したサンプルとともに上がってきます。
さて生き物が上がってくるでしょうか!

つづく

(C)JAMSTEC(C)JAMSTEC

(C)JAMSTEC(C)JAMSTEC


海洋研究開発機構(JAMSTEC)YK09-13「よこすか/しんかい6500」によるインド洋深海生物調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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