航海10日目。きょうは海況がよくありません。
航海の中で一番荒れた朝で、潜航するのかしないのか心配になりながらデッキへ向かいましたが、潜航決定の知らせを聞き、ほっとしました。
今までは、本土から南へ下った離れた外洋の海底を見てきました。
いよいよ、私たちのすくそばの海「相模湾」の潜航調査が始まります。
いったいどんな海底なのでしょうか?
潜航がはじまると、海中に浮遊する懸濁物の多さに外洋の海との違いを感じました。
ハイパードルフィンや強い流れに当たると目の前で砕けて、さらに細かい物質へとなっていきます。
水深 400~ 500mあたりで海中を浮遊する大きなアミの群れに出会いました。
これも近海の海ならではでしょうか。
水深 940m付近に着底すると辺り一面泥と岩の傾斜のある海底でした。
ハイパードルフィンが海底に触れたり、移動するときのスラスターの水流で泥が巻き上がります。
シロウリガイやシンカイヒバリガイ、ハオリムシの仲間(チューブワーム)などが生活しており、彼らは堆積した泥の下に発生した硫化水素やメタンをバクテリアの力を借りて利用して生活しています。
このような海底を「湧水域」といいます。
魚類では、ギンザメやヌタウナギ、フサカサゴの仲間も見られ、エゾイバラガニもビバリガイの上を歩いていました。
熱水噴出口が見られる「熱水域」を「動」とすれば、相模湾はまさに「静」のとても静かな印象の海です。
この海で特徴的なシロウリガイはとても飼育の難しい生物の一つで、“えのすい”では年々その飼育記録を更新しています。
一日でも長く深海に棲む生物たち独特の生態を紹介できるように飼育をがんばっていきます。
本日は、曇っていて“えのすい”を探すことができませんでした・・・。
あしたはどうかな?
きょうの画像は、ブリッジから撮影しました。
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)NT11-09「なつしま/ハイパードルフィン」による相模湾(初島沖)、伊豆小笠原孤(明神海丘、水曜海山)調査航海
新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。