2014年04月12日

伊豆・小笠原弧 熱水域調査航海(3)4月12日 シチヨウシンカイヒバリガイ

  • 期間:2014年4月11日~2014年4月20日
  • 場所:伊豆・小笠原弧の熱水域
  • 目的:伊豆・小笠原弧 生物群集調査
  • 担当:根本
海底でそそり立つチムニー海底でそそり立つチムニー


明神海丘は水深 1200mにある海山です。
中央には窪“カルデラ”があり、この中に熱水噴出域が点在しています。
熱水域には中国の水墨画に出てくる山をさらに尖らせた形をした熱水噴出孔“チムニー”が海底からそそり立ち、その先端や脇の亀裂から熱水が噴出しているのが「温度差による揺らぎ」として見えます。


熱水をガンガン噴いていそうなチムニーの色

この熱水噴出孔を探すため、海底地形図と過去の調査の記録を頼りに航路を決め、最終的には目視で熱水噴出域を探しますが、重要なことはそこにシンカイヒバリガイが生息しているかどうかです。(注:「シチヨウシンカイヒバリガイ」は種名が長いので文中では本種を“シンカイヒバリガイ”と書いています)

「シンカイヒバリガイ」はパソコンのマウスほどの大きさの茶色い“イガイ科”の二枚貝です。
海岸などで黒い貝(イガイ類)がゴッチャリ付いているのをご覧になったことがある方は想像しやすいのですが、深海のこの種も同じような生態をしており、チムニーの周りにマット状になるほどの密度で付着しています。
ただ、どのチムニーにも生息しているわけではなく、多い所もあれば少ない所もあり、チムニーを見つけては「シンカイヒバリガイ」の密度を観察します。
さらにハイパードルフィンが着底できる場所かどうかも加わり、聞くと簡単な作業ですが、水深 1200mの海底で灯光器の明かりを頼りにロボットを使っての作業ですので、高度な作業で時間もかかります。

「シチヨウシンカイヒバリガイ」は小笠原の熱水域やインド洋に生息する貝で、エラに共生させている細菌を利用し、硫化水素からを自分が生きるためのエネルギーを作出しているといわれています。
ただどのようにして細菌からエネルギーを受け取るのかなど、詳しいことはよく解っていません。
飼育の方もうまくいっているとはいえず、この貝の潜在的なタフさで、ある程度水温や水質が整っていれば 1年は生きていくことができます。
移動したり、貝を開け呼吸をしていたりと元気そうな姿はよく見せますが、解剖すると外から見た以上に痩せていて衰弱していることがわかります。
硫化水素の供給も試みていますが効果薄です。
やり方が悪いのか、何かが足りないのか、何かが多すぎるのか、飼育に向け要因を一つずつ潰していこうと思います。

海底に到着したハイパードルフィンは、灯光器の光で照らされた紺色の深海の世界を進んでいます。
チムニーは他の岩とは違う独特な形をしているので、見つけることは難しくありません。
ただ熱水を噴いているかは、近づき「揺らぎ」を観察しないとわかりませんが、元気に熱水を噴くチムニーは白っぽい色をしていることが多いのが特徴です。
ただ、吹きすぎてもよくないのか生息していないことが多々あります。
「シンカイヒバリガイ」のコロニーに到着すると、各種センサーでの測定や採水をおこない、いよいよスラープガンでの採集が始まります。
水中掃除機のように大きな貝を吸っていきますが、途中で詰まったり、 7連キャニスターのボトルが回らないほど入れてしまうと採集不能になったりますので、慎重に作業を進めます。


本調査は、JAMSTECが東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです

JAMSTEC(海洋研究開発機構)NT14-06「なつしま/ハイパードルフィン」による複数の海山カルデラ周辺における底生生物群集調査

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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