2015年04月28日

湯河原 キンメダイ乗船採集キンメダイ採集日誌/鈴木

  • 期間:2015年04月15日(水)
  • 場所:神奈川県 湯河原
  • 目的:乗船採集展示
  • 担当:岩崎・鈴木

前回2月10日に引き続き、同場所同時刻にてキンメダイを狙い乗船いたしました。
お世話になったのも前回同様、「天恵丸」さんです。
今回は岩崎トリーターと私の2名の乗船となりました。
予報ではかなりの強風ということで、トリーターサイドではおそらく無理かな・・といった雰囲気でしたが、「この時期はこれくらい(の風で)で行かなきゃ乗れないよ」と船長さん。
・・すいません、そうなんですね・・。

午前3時30分頃、“えのすい”出発です。
“えのすい”前は風が吹きやや荒れ模様。不安を抱きつつ到着すると、やや風は吹いているものの“えのすい”前よりはだいぶ弱まっている感じです。
やはり真鶴半島が防風壁になっているからでしょうか。心強いです。

明け方5時頃いよいよ出港です。
海上では、やはりうねりはなかなか強く、半島の反対側の西側からはやや風も吹いています。
「結構揺れるな・・」と思っていると、前回の大荒れを経験している岩崎さんは、「前に比べたら、最高の釣り日和だよ」となんとも頼りになるお言葉。さすがはおさかなマイスターです。
さらに、岩崎トリーターは前回経験しているだけあり、準備もスムーズです。一方私は釣好きではあるものの、キンメは今回が初挑戦で、電動リールも初めて使います。さらに、ご存知の方もいるかもしれませんが、つい3月までは海獣トリーターとして働いており、魚を扱うのは3年半ぶりです。
よって、船長さんに一から教えていただきながらの釣りとなりました。丁寧なご指導ありがとうございました。
釣り方や細かい道具などの説明は、前回2月10日の岩崎トリーターのキンメダイ採集日誌をご覧いただければ詳しくお分かりいただけると思いますので、今回は割愛させていただきます。

では、初のキンメダイ釣りの記念すべき一投目、大変ぎこちない手つきで 6本の針を順番に落としていきます。
餌は短冊切のサバがメインで、他にイカやサーモンのハラス(?)、ホタルイカなどです。


「ではそのまま底まで重りを落としてくださーい」
船長さんがマイクで指示をくれます。


電動リールのデジタル表示がどんどん水深を増していきます 50m・・ 100m・・ 150m・・ 200m・・おぉー、話には聞いていましたが、300m近くまで糸が出ています。
今まさに深海の入り口をこの細い糸と重りが通過したと考えると、自然と胸が高鳴ります。
そして何より、その糸と重りは私の手によりコントロールされています。
まさに深海に出入り自由状態です(笑)

そんなくだらない優越感に浸りながら、底に重りが着き、棚どりをおこなう為ややリールを巻いた直後です。
「グッ、グッ」
竿がしなります。おっ、何か反応があったような・・まさか?
300mまで針を落とすので巻き上げもかなりの時間がかかります。よって巻く判断もやや慎重になるところです。また、普通は少し待って他の魚がつられて針に掛かる追い食いも狙うところですが、ここは流石にキンメダイ釣り素人の私、すかさず巻き上げボタンのスイッチONです!
200m・・ 100m・・ 50m・・ 20m・・いよいよです。
船長さんに巻き上げ方を説明してもらいながら上げていくと、波で揺らぎながらも魚影が見えます。
これは確実に何かついていますよ。
(おー!まさかいきなり・・)心で叫びます。
・・ん??銀色?どうやらキンメではなさそうです。


正体はオオメハタ(通称白ムツ)でした。
さらに続いて下の針にも赤い魚が!今度こそ・・!
ん?形が違う。なにやら明らかに深海にいそうな見慣れないメバルがかかっています・・!?


圧力の変化で目や鰾が飛び出してしまっていたので、空気を抜き、素早く生簀に移しますが、すでに瀕死でした・・。
元々圧力変化に弱い魚ではあるようですが、焦ったばかりに巻くスピードが速かったのかもしれません。
しかしそこは飼育員として何とか活さなければ。
次はもっとゆっくり巻くことにします・・。
ただ、キンメでは無いにしろ、いきなりのダブルヒット。
深海釣り、最高に楽しいです。
勿論これは大切なお仕事ですよ(笑)
幸先も良さそうです。次はキンメダイも期待できるかもしれません!!


・・さて、散々一投目を長く引っ張りましたが、それもそのはず、本題は一言で終了するからです。
えー、先にいっちゃいます。本日キンメダイは釣れませんでした・・。
みなさん、期待させてすみません。m(__)m

その後は、ユメカサゴがポツポツ、例のメバルももう一度かかりましたが、やはり圧力変化でうまく活かせず・・。
そんな暗ーい深海のような釣果で、帰りを待つトリーターからの冷ややかな目を覚悟していると、また例のメバルです。しかも今回は状態が良さそうです。
これは救いの光かも!!
「岩崎さん、今回はなかなか状態がいいです!」
声をかける前から、阿吽の呼吸でサポート体制万全の岩崎トリーターが素早く空気を抜き、この救いの一匹を活かすべく、二名体制で生簀に収容します。
二人で生簀をじーっと見つめます。
「おっ、結構落ち着いてますね」
なんとかうまくいったようです。
本筋とは違いましたが、珍しい成果がありと少しほっとした瞬間です。


さてこのメバル、後で調べると「ウケグチメバル」というようです。
しかも、なんとなんと、“えのすい”では初めての種の可能性が高く、展示できれば“えのすい”初展示かもしれません!! 期待大です!


長らく本種と一緒に釣れて、よく似た「カタボシアカメバル」と型違いの同種と思われていたようですが、近年別の種類ということが分かり、2種に分けられたようです。
ちなみに、前者は鰓蓋に黒い帯がありますが、後者は黒い斑紋があることで見分けられます。
どちらも、この辺りでは「アコウメバル」という呼び名があるようです(別の場所ではアコウメバル=キジハタみたいです)。
やはり本種は圧力変化に弱いようで、「釣り上げた後生きて泳いでいるところは見たことが無い」と船長さん。なんとも箔がつくお言葉、ありがとうございます。

その後もいろいろとポイントを変え時間ぎりぎりまでやっていただきましたが、11時30分頃、終了です。

では、最後に言い訳です。
実は今回、スプリングブルーム(春季大繁殖といって、寒い時期に全体に行き渡った栄養分と春の暖かい日差しよって、植物プランクトンが大繁殖を起こすこと)の影響で、魚群探知機が全く役に立たなかったのです。ソナーの音波が全てプランクトンに反射して、画面が真っ白になり、本当に手探り状態での釣りだったようです・・。プランクトン恐るべし・・。
また、この時期の良ポイントであろう初島沖がキンメダイ禁漁期のため行くことができなかったのです。
以上、言い訳でした・・。ごめんなさい。
そんな中、ポイントをこまめに回り、ぎりぎりまで粘ってくれた船長さんに感謝です。
本当にありがとうございました!


キンメダイはダメでしたが、何とか活かせたウケグチメバルは現在バックヤードでトリートメントし、展示ができるように準備をしております。
うまくみなさまに見せることができたら嬉しいです\(^^)/

そんなところで、いろいろな意味で勉強になった採集となりました。
前回に続き多大なご協力いただきました天恵丸さん、ありがとうございました!

太平洋

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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