2019年07月25日

勢水丸 三重県沖生物採集航海(4)航海日誌 4日目/八巻

  • 期間:2019年7月22(月)~2019年7月26日(金)
  • 場所:三重県沖
  • 目的:ドレッジ、プランクトンネットによる生物の調査・採集
  • 担当:西川・八巻


天候にも海況にも恵まれ、あっという間にきょうが調査最終日となりました。
最終日ということで、午前中に1回ドレッジをおこない、午後は片づけなどに充てることになりました。

調査海域は熊野灘東方の安乗口海底谷周辺で、水深約 200mのドレッジをおこないます。
おとといの底質は礫、きのうは泥、ときたら・・・ きょうは砂でしょう!と思っていたら、本当に砂の海底でした。
今回、偶然にも 3種類の底質の生物相を比較できたのは、とても興味深かったです。
水深のせいもあるかと思いますが、昨日一昨日の同水深帯と比べても、生物量が豊富なように思えました。
今回採れたらいいなと思っていた生き物に、チョウジガイやセンスガイなどの個体サンゴの仲間がいますが、それらも採集することができました。


センスガイの仲間


チョウジガイの仲間

普通サンゴの仲間は、イソギンチャクのような形をした「ポリプ」がたくさん集まって群体を形成していますが、深海にはポリプがひとつだけの個体サンゴの仲間が多く生息しています。
砂地の海底にはこれらの仲間がポツポツと点在しているようです。
底引き網漁などでも混獲されることがありますが、センスガイを「入れ歯」と呼んでいる漁師さん達もいます(笑)。
個体サンゴの仲間は、“入れ歯”型や円盤型の骨格がポリプを形成する柔らかい軟体部で覆われていますが、どうしても採集のダメージで軟体部や骨格が傷ついてしまいます。
ただ、しばらく経つと再生することが多く、今回の個体も再生して元気になってくれるよう、大切に見守りたいと思います。

センスガイの他にもストローのような棲管に入った多毛類がたくさん採集できました。
とても小さく普通であれば展示できるようなものではないのですが、たくさんとれたので持ち帰ってみることにしました。
多毛類は専門家でないと種まで落とすのはとても難しいですが、改めて確認したいと思います。
写真の下の個体は左の方に顔を出しています。意外とかわいい顔をしていると思いませんか?


管棲ゴカイの仲間

今回ソーティングで出てきた生き物で特に面白いのが、ウミクワガタの仲間です。
ウミクワガタの研究をされている学生さんに見せていただきました。


ハナダカウミクワガタ

どう見ても昆虫のクワガタですよね。
やはり大あごをもっているのはオスだけですので、写真はオス個体です。
最近知名度も上がってきていますが、ウミクワガタは大きく分けるとグソクムシなどと同じ等脚類で、よく見ると脚の数が多いし、エビのようなしっぽが付いています。
節足動物というとても大きなくくりでまとめられるものの、昆虫のクワガタとは全く違う分類群の生き物です。
実はウミクワガタは魚の血を吸血して大きくなり、血を吸っていない時だけ砂の中に隠れているのです。
こちらは研究用なので持ち帰ることはできませんが、こんな面白い生き物、写真だけでもお伝えできたら楽しいなと思い、載せてみました。

きょうはこの後下船準備をし、あすの朝下船、水族館へ生き物を運びます。
少しでも多くの生き物をみなさまにお見せできるようにしたいと思います。

文末で恐縮ですが、今回採集の機会を与えてくださった北里大学海洋生命科学部の三宅先生、広瀬先生と研究室の学生の方々、また昼夜を問わず採集をサポートしてくださった三重大学大学院生物資源学研究科附属練習船「勢水丸」の船長はじめ船員の方々へ深く感謝申しあげます。
ありがとうございました。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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