2020年08月16日

江の島 (1)3年ぶりの本格的調査始動

  • 期間:2020年8月16日(日)
  • 場所:江の島
  • 目的:潮間帯と陸域のカニ類の調査
  • 担当:伊藤


みなさま、こんにちは。
旧・江の島水族館時代から脈々と続く研究の一つに、江の島の調査があります。長らく調査を指揮してこられたのは、元えのすいの大先輩、植田 育男さんと萩原 清司さんです。
お二人の調査は海岸動物全般にわたり、約 30年もの間、多くの論文として世に送り出されています。
ネクストジェネレーションの末端である私としては、その活動を受け継ぎ、なおかつ楽しく江の島を学べたらと考えているわけです。
実は昨年から久々に調査をしたいな、ということで植田さんと相談をしていました。
例年通り春にやるぞ、と思っていた矢先、例の緊急事態です。
世間の情勢を追いながら、今が「数人でまとまって調査」する絶妙なタイミングだということで、すかさず動くことにしました。

今回の主対象はカニです。私が好きな対象の一つです。
江の島のカニについては、潮間帯で繰り返し研究されてきたほか、漁師さんにご協力いただいた深場の研究や、江の島の地理把握も兼ねて行なった陸域の研究が既にあります。
江の島では結構力を入れてきたグループですが、今回も何か明らかにできるのでしょうか。

今回はいわば下調べ。
本調査前の地形把握を兼ねて、一人で島の北端から西まわりで南西端まで歩いてきました。
「ここはあやしいぞ(カニが潜んでいそうだ)」というところをチェックしていきます。


江の島の橋をくぐっていく。

まずは北端、橋とそれを支えるための橋脚、埋め立て護岸が施されております。
人工的な環境とはいえ、大量のフジツボやカキが付着して、カニの隠れ場所を作り出しています。
案の定、イワガニやイソガニがところどころに潜んでいます。
想像通りだなと思いながら進んでいくと、明らかに動きが素早いカニがいることに気づきます。
こちらが近づくと水中にダイブしてしまいます。
ついでに魚でも採ろうかと持っていた手網をカニの逃走経路の下に素早く差し出し、何個体かキャッチできました。


ハシリイワガニモドキ。激烈に素早い!

これはハシリイワガニモドキです!
よく似たハシリイワガニとは、目の下のくぼみ内の形や、オスのお腹の脚の形で区別できます。
実は数年前に相模川で見つけており、現在も北限記録なので、思い入れのある種類です。
その後、他の研究グループが境川で見つけたのを知っていたので、いるのでは、と踏んでいました。ずばり的中です。

幸先の良いスタートです。
あまり時間がないのでサクサク南下。おなじみのイワガニやイソガニの生息をちらちらチェックしながら、やや陸寄りの乾いた場所では、オレンジ色が美しいアカイソガニや、クロベンケイガニを発見。どちらもいるところにはいる種ですが、江の島ではレアな種です。


サワガニみたいな雰囲気のアカイソガニ。


産卵のため海辺に降りてきたクロベンケイガニ。

1時間ほどで南西端に到着。
大きめのタイドプールにはカエルウオやメジナがたくさん泳いでいます。
その下をよく見ると、トゲアシガニがいました。趣味飼育の世界では、コケ取り用の脇役として重宝され、むしろショップでよく見かけますが、野生の姿は格別です。
美しい色とギザギザの目立つ姿は主役級だと思います。


タイドプールの深みに群れるトゲアシガニ。

下調べだというのに、思った以上にいろいろ見つけることができてしまいました。本調査を始めれば、さらにあっと驚くようなカニが見つかるかもしれません。
これから数回に分けて、調査のようすを惜しげなくお伝えしますので、ご期待ください。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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