2021年03月22日

2020年 ウミガメ類のフィールド調査報告

    “えのすい”では、相模湾沿岸におけるフィールド調査の一環として、ウミガメ類の上陸産卵とストランディングについて現地調査を実施しています。
    日本の太平洋沿岸におけるアカウミガメ産卵の北限地域にあたる相模湾では、毎年数件のアカウミガメの上陸や産卵行動が観察されます。
    また、十数件から多い年では百件以上のウミガメ類が漂着(ストランディング)しています。
    産卵を確認した場合は、データロガー(温度記録装置)を産卵巣の上部、中部、下部に埋め、砂中温度を測定して、孵化・孵化脱出後に産卵数と孵化率の確認を行います。
    アカウミガメの産卵は例年 6月上旬から 8月上旬にかけて観察され、約 2か月後の 8月上旬から 10月上旬にかけて孵化脱出する場合が多いです。
    今年度は 6月21日 七里ヶ浜海岸()、7月21日 茅ヶ崎海岸()の 2件の上陸が確認されました。
    6月21日 七里ヶ浜海岸の上陸はアカウミガメで産卵も確認され、8月末に孵化・脱出が確認されました。


    6月21日 七里ヶ浜産卵巣調査(9月30日 産卵巣調査時撮影)


    7月21日 茅ヶ崎ウミガメ上陸痕


    データロガー
    (ビニールに入ったロガーを砂中に埋め、紐で結んだタグを砂の上に設置。タグには水族館の連絡先と裏面にはロガーを埋めた深度を明記)

    ストランディングの場合は、現場に出向いて種と雌雄の判別、標識タグの確認(標識タグを付けて放流される場合があるため)、標準直甲長(背甲の首回りのくぼみから臀甲板先端)、標準直甲幅(甲羅の一番幅の広い場所)を測定します。
    現場での病理解剖は、細菌等を水族館へ持ち込まないために実施していません。
    ただし、DNA分析の為の肉片サンプルを行います(腐食の進行度合いによって採取しない場合もあります)。


    直甲長測定


    ストランディング個体


    前肢に取り付けられている標識タグ

    ストランディング個体は波打ち際や砂浜で膨満、腐敗していることが多いです。
    腐敗し、膨満して浮いた状態の場合は、死後数日が経過していると推測されます。
    今年度に当館で対応したストランディングは、アカウミガメ 6件、アオウミガメ 3件、オサガメ 1件の合計 10件で、漂着時期は 5月4日~8月7日までの 3か月でした。
    当館では 2007年より相模湾におけるウミガメ類のフィールド調査を通年行っていますが、ほとんどのストランディングが春から初秋にかけて起きています。


    2020年度 ストランディング記録


    産卵・上陸・ストランディングポイント

    8月4日には、鵠沼海岸でオサガメの漂着が確認されました。例年多くのストランディングが確認されているのは、沿岸で索餌をするアカウミガメとアオウミガメで、外洋をクラゲなどの餌を求めて回遊しているオサガメの漂着は、非常に珍しい事例です。



    オサガメのストランディングのようす


    オサガメの口内
    (口に入れた生き物を逃さないように、先のとがった突起がびっしり並ぶ)

    このフィールド調査は、地域のみなさまやお客さまからの通報を元に実施しています。今年度のウミガメ類の情報提供、フィールド調査へのご協力ありがとうございました。
    来年度も可能な限りフィールド調査を実施していきますので、引き続きご協力をお願いいたします。

    浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

    触ってもいいの?

    どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

    “えのすい”はなにをするの?

    打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
    さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

    生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

    浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

    水族館で救護することはあるの?

    どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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