2023年05月11日

新日丸 錦江湾生物採集航海10年ぶりの再会

  • 期間:2023年4月28日(金)
  • 場所:鹿児島湾湾奥
  • 目的:ハオリムシ採集
  • 担当:八巻

みなさんこんにちは! 八巻です!
昨年12月にかごしま水族館と共同で鹿児島大学水産学部附属練習船「南星丸」に乗せていただき、サツマハオリムシの付着した鯨骨の回収を行いました(2022年12月17日フィールド調査)。今回もかごしま水族館がおこなった調査に同行させていただき、10年前に沈設した鯨骨の回収に成功しましたので、お話させていただきます。

今回は 4月28日に、12月のときと同様の海域、鹿児島湾の湾奥、サツマハオリムシの生息域で、多目的作業船/ROV「はくよう」母船 「新日丸」とROV「はくよう」を用い、調査を行いました。

新日丸新日丸

「はくよう」「はくよう」

ROV (Remote Operated Vehicle)とは無人探査機、ケーブルでつながった船上から操作を行う水中ロボットのことです。「はくよう」はその中でもJAMSTECのハイパードルフィンとも同型のもので、大型で大規模な作業もできる汎用性に優れた機器になります。

これまで同海域では、かごしま水族館と共同で、鯨骨の沈設、回収を何度か行って所有の水中ドローンを用いてきました。
したがって、今回のように大型のROVを用いて鯨骨の沈設、回収を試みるのは初めてです。「はくよう」がこれまでの機器と最も違うところは、何より大型の回収物を引き上げられる点、そして水中での緯度経度がはっきりと分かる点です。

「はくよう」の運航情報パネル「はくよう」の運航情報パネル

これまでの機材は自身が水中のどの位置にいるかが分からないため、水中に沈設した鯨骨を探す場合、沈設した緯度経度から潜航、海底に到着したら周辺をランダムに捜索するというかたちで行っていました。また、もし骨を見つけたときも、その緯度経度を知ることができません。
しかし、今回はROVの緯度経度をしっかりモニタリングしながら探しに行くことができるのです。とはいっても、鯨骨を沈設した水中の位置は分かりませんので、潜航しやすい場所から潜航し、沈設点に向かって航走するという方法で探します。しかし、骨を見つけた場合、これまでと違ってその場所の緯度経度が正確に分かりますので、もしまだハオリムシがついていなくても、その場所の緯度経度を記録しておけば今後そこへ行くことができます。
そのため、今回は海底の位置がしっかりと記録し、今後回収しやすい状態で沈設も行いました。
今回、回収を狙う設置物は、2013年に設置した直径 1mほどのかごに入れて沈めた骨、 3個です。これまでも何度か観察には成功していて、サツマハオリムシが付着していることは分かっていました。

昨年12月に観察した鯨骨入りのかご昨年12月に観察した鯨骨入りのかご

しかし、これまでもお話しした通り、見てはいるけど水深以外の正確な場所が分からない、という状態でした。しかし、これまでの経験上、水深をたよりに探していけば、大抵見つかります。というのも、水深がはっきりしていれば、丘の周りをぐるりと回った等深線上のどこかにあるはずだからなのです。
今回もその作戦で、かごを沈設した場所から少し離れたところから、かごを沈めた水深まで潜航、その水深を保ちながら、かご沈設点を目指しました。
途中、新たな骨を設置したり、これまで沈設した鯨骨を発見、正確な緯度経度を確認したりしながら進みました。何度か見慣れない場所も通ったものの、しばらくすると見事! 目的のかごを発見できました!

うっすら見えてきた鯨骨入りのかごうっすら見えてきた鯨骨入りのかご

しかし、ハオリムシの姿は映像ではあまり確認できず、やや心配ですが、とりあえず回収しようということになりました。当初の予定ではマニピュレーターでつかんであげることになっていましたが、実際につかんでみると、思った以上に泥に埋もれており、その方法での回収が困難であることが分かりました...
回収は厳しいのかなぁと頭をよぎりましたが、そこはさすが海底に沈んだ物の回収を専門とする「はくよう」運航チームの方々です。一度引き返して、回収用のロープを取り付け、もう一度回収に向かうという方針に切り替えてくださることになったのです!

回収用のロープをセッティング回収用のロープをセッティング

今回はかごの緯度経度をしっかりと記録していることに加え、「はくよう」自体の緯度経度も分かります。何より「はくよう」運航チームの方々の操縦技術のおかげで、あっという間にかごの場所に戻ることができました!
いよいよロープをかごにかけ、「はくよう」ごと揚収することとなりました。

回収用ロープをかごにかける回収用ロープをかごにかける

途中でロープが切れたりせず上ってきてくれることを祈るのみですが...
水面に上がってきた「はくよう」から伸びるロープは緊張してるように見えます! つまり下に重いものがついているということ。

揚収された「はくよう」と、かごの付いたロープ揚収された「はくよう」と、かごの付いたロープ

ロープをクレーンにつなぎ変え、引き上げてみると、無事回収できていました!!! あとはハオリムシがついていてくれさすれば大成功です。よくよく見ると、かごの隙間からハオリムシの棲管がたくさん見えています!

回収されたかご回収されたかご

つまり、ハオリムシもたくさんついていることが分かりました!
その後、回収した骨をかごから出してみると、とてもたくさんのハオリムシが付着していることが分かりました。

回収されたハオリムシが多数付着した鯨骨回収されたハオリムシが多数付着した鯨骨

回収した骨は 6月に受け取りに行き、当館でも展示予定です。自然に形成されたとても見ごたえのあるハオリムシのコロニー、展示が始まった暁にはぜひ見にいらしてください。
骨を譲ってくださった外房捕鯨株式会社の方々、設置およびモニタリング作業をおこなってくださった鹿児島大学の「南星丸」乗組員方々、回収作業をおこなってくださった深田サルベージ建設株式会社の「新日丸」乗組員および「はくよう」運航チームの方々、共同での鯨骨の設置回収および今回航海乗船の機会をくださったかごしま水族館の方々、本当にさまざまな方々の協力を得て10年ぶりに無事多数のハオリムシが付着した鯨骨を回収することができました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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