アマモ育成の試みについて

2006年02月
第50回 日本動物園水族館協会 水族館技術者研究会
崎山 直夫 他



アマモ育成の試みについて

崎山 直夫(1), 神応 義夫(1), 奥山 陽子(1), 櫻井 徹(1), 伊藤 寿茂(1), 小谷野 有加(1), 山本 克則(2), 小河 久朗(3), 植田 育男(1), 谷村 俊介(1), 堀 由紀子(1)
 (1) 新江ノ島水族館
 (2) 鹿島建設
 (3) 北里大学

 アマモは海草の一種で沿岸域に見られ,その群落はアマモ場として沿岸生態系の中で重要視されている.一方埋め立てなどによるアマモ場の消失も深刻とされ,このような背景をもつアマモ場の様子を再現する展示を計画した.
 新江ノ島水族館では二通りのアマモの育成方法を試みた.
(1) 以前より試みていたもので,地先のアマモ場から草体を地下茎ごと採集してきて育成する.
(2) 種子から苗をつくる方法で,花穂から得た種子を一時保存し,その後淡水処理による発芽促進手法で育てたアマモ苗を用いる,
の2方法である.後者は花穂のみの採集ですむため天然のアマモ場への影響が少なく,より環境に配慮した方法と考える.また,この方法を水族館の展示に用いるのは極めて稀な例と思われる.これらの方法によるアマモの育成を館内の二つの展示水槽でそれぞれ試みた.
 各水槽はいくるかの問題点があるものの,設置以来激しい枯渇はなく草体は維持されている.しかしアマモの生育状態に注意が向きすぎ,一つの展示という意味では問題が多い.今後はその問題の解決を図るとともに,この展示を通じてアマモ場が沿岸生態系に果たす重要性と環境面の配慮について多くの来館者に伝え, 環境教育の場として活用したい.今回,アマモ発芽技術導入で研究機関の協力を仰いだが,そこでの共同作業は水族館だけの取り組みより視野の広い仕事に発展できる可能性がある.今後も協力して良いものを作っていきたい.


2006年9月 動物園水族館雑誌 47(4) P131 掲載
著作権:社団法人日本動物園水族館協会
2008年12月,動物園水族館雑誌編集委員会より転載許可

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