江の島の潮間帯動物相(中間報告)

2007年09月
第52回 日本動物園水族館協会 水族館技術者研究会
植田 育男 ・ 萩原 清司 ・ 櫻井 徹



江の島の潮間帯動物相(中間報告)

植田 育男(1), 萩原 清司(2), 櫻井 徹(1)
 (1) 新江ノ島水族館
 (2) 横須賀市自然・人文博物館

 水族館周辺の海域における生息相の情報は,展示活動をする上で重要な指標となるため,地先の海岸における生息動物の調査を行った.
 現地調査は, 2007年5月30日,6月1日,4日,14日の最干潮前後に実施した. 調査場所は,相模湾江の島(外周約5km, 面積0.38km2)の島内6地点(St.1−St.6と表記)で,それぞれの地点の底質はSt.1,2,3,が岩盤,St.4が石積護岩石およびコンクリート,St.5がコンクリート,St.6が岩盤および転石で,本土側より流出する最寄河川の境川河口から直線距離は,St.1から6までそれぞれ,798,500,269,288,500,760mである.各地点では,気温,接岸水温,塩分,pHの数値項目と画像で環境の記録を取った後,潮間帯部分を潮位高で上,中,下の3区分に目測にて分け,潮位高区分毎に肉眼で出来る大きさの動物について記録した. St.1,2,6の3地点では潮溜まりが見られたため,その中の動物も記録した. 現地で同定できない種については,採集し後日同定した.個体数の多寡は,100cm2相当の簡易方形枠内の個体数で,2個体未満を+,2個体以上10個体未満を++,10個体以上を+++として表記した.
 2007年7月31日時点で, 研究室同定部分を含め183種の動物が確認された. 地点別の出現種数では,St.6の91種,St.5の76種,St.1の73種の順に多く,St.4が35種で最少だった.重複して出現する種数により地点間の類似度を評価すると, St.2とSt.3間, St.1とSt.6間,St.3とSt.4間の順で高く,逆にSt.3とSt.6間やSt.2とSt.6間で低く,河口から距離あるいは地点相互の位置関係に対応した結果となった. 全地点で, かつ様々な潮位高の出現種として,イボニシ,タテジマキンチャクダイなどがおり,逆に1地点の限られた潮位高にのみ出現した種は70種いた.


2008年5月 動物園水族館雑誌 49(2) P57 掲載
著作権:社団法人日本動物園水族館協会
2008年12月,動物園水族館雑誌編集委員会より転載許可

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