深海生物の飼育の試み

2004年11月
第49回 日本動物園水族館協会 水族館技術者研究会
三宅 裕志 ・ 植田 育男 ・ 北田 貢 ・ 丸山 正 ・ 山本 啓之 ・ 藤倉 克則 ・ 三輪 哲也



深海生物の飼育の試み

三宅 裕志(1), 植田 育男(1), 北田 貢(1)
丸山 正(2), 山本 啓之(2), 藤倉 克則(2), 三輪 哲也(2) 
 (1) 新江ノ島水族館
 (2) 海洋研究開発機構

 深海底の熱水噴出域や冷湧水域には化学合成生態系が存在し,そこに棲む生物は,低pH,低酸素濃度,高二酸化炭素濃度環境などこれまでの水族館生物飼育条件の常識に反する環境で生息している.
 本研究では, 海洋研究開発機構との共同研究の基に, 潜水艇でしか採集できない深海生物・化学合成生態系生物の長期飼育・展示を試みている.
 深海生物の採集は,海洋研究開発機構所有の有人潜水船「しんかい6500」および無人探査機「ハイパードルフィン」を用いて行った.採集生物はシロウリガイ類,シンカイヒバリガイ類,ハオリムシ類,クラゲのポリプ等であった.採集した貝類およびハオリムシ類は,水温は現場の水温4〜8℃,窒素瀑気によって溶存酸素を1.0〜2.0mℓ/ℓに制御し,さらに二酸化炭素ガズ添加でpH6.8〜7.0に制御した水槽(水量約63ℓ)にて,エネルギー供給源である0.1mol/ℓ硫化ナトリウム水溶液2mℓを1日1〜2回添加して飼育した.ポリプ類は温度のみを現場飼育環境(4℃および8℃)に類似させた水槽で飼育した.
 これまでのところ,シロウリガイ類は飼育が困難で,1〜3週間程度の飼育にとどまっている.2004年4月25日に採集されたシンカイヒバリガイ類は,9月25日現在も生存している.ハオリムシ類は良好な状態で飼育できており,目下生長量を測定している. ポリプ類はコロニーを拡大し,クラゲを出すに至っている.


2005年9月 動物園水族館雑誌 46(4) P151 掲載
著作権:社団法人日本動物園水族館協会
2008年12月,動物園水族館雑誌編集委員会より転載許可

RSS