2016年01月
第60回 水族館技術者研究会 宿題調査(日本動物園水族館協会)
戸倉 徹 ・ 北嶋 円 ・ 佐野 真奈美 ・ 崎山 直夫
ウミガメ類の飼育と繁殖について
○戸倉 徹 ・ 北嶋 円 ・ 佐野 真奈美 ・ 崎山 直夫
新江ノ島水族館
[要旨] 2005年の宿題調査報告(ウミガメ類の飼育について:鴨川)以降,ウミガメ類を飼育する設備や技術の向上により,繁殖・放流を行う園館も増加している.そこで,ウミガメ類の飼育,特に繁殖に関する現状を把握し,情報共有をする事によって,今後のウミガメ類の飼育技術向上に資する事を目的として調査を実施した.
対象動物種が動物園水族館にわたって飼育展示されているため,JAZA加盟の全152園館を対象とした.
調査の冒頭にてウミガメ類飼育の有無を問い,飼育している園館には,詳細質問として「子ガメの入手方法」「飼育個体」「個体間闘争」「飼育施設」「餌料」「飼育下繁殖」「放流」「疾病」「飼育に当たり考えている事や問題点」と大きく9つのジャンル,44項目を問うた.
その内記述式回答は7項目とし,調査対象期間は,2004年1月1日~2014年12月31日とした.
集計の結果,現在ウミガメ類を飼育している園館は47園館で,飼育種はアカウミガメ,アオウミガメ,タイマイ,ヒメウミガメ,クロウミガメの5種と,アカウミガメ×アオウミガメ,アカウミガメ×タイマイ,アオウミガメ×タイマイの3タイプのハイブリッドであり,ウミガメ類の飼育頭数合計は4,237頭,その内,最も多いのはアカウミガメであった.
個体間闘争は25園館(53.2%)で見られた.2004年以降で飼育施設の更新は18園館(38.3%)で行われた.
餌料種の割合は魚類が全体の46.0%,イカ類が20.6%,野菜が13.3%,他であった.
施設内繁殖は6園館(12.8%)で確認され,孵化1ヶ月後の平均生残率は93.2%であった.
放流個体数は合計で9,237頭あり,最も多かったのはアカウミガメの7,003頭(75.8%)であった.
病気の発症は47園館中25園館(53.2%)より報告があった.
最後に「飼育に当たり考えている事や問題点」では22園館から意見が出され,今後の繁殖における遺伝的多様性に伴う血統問題や,施設の改善希望などが挙げられた.