しんかい2000運航チームOBのメンバー(※)による、しんかい2000や深海に関するQ&Aその 5です。これでラストです。
それでは、どうぞ。
Q
・深海はきれいなの?
A
・とても綺麗!感動します。まず、下降時は太陽の光がどこまで届くか?見てみましょう!潜るにつれ青色から紺色に変わる海の色はとても綺麗です。ライトをつけるとマリンスノーと呼ばれるプランクトンの遺骸が下から上に雪が降るように見ることが出来ます。そのマリンスノーと一緒に、小さい魚、何種類ものクラゲ、イカの仲間もよく見かけます。海の中は生命に満ち溢れていると感じる時です。また、それに飽きたらライトを消してみましょう!最初は真っ暗闇で何も見えませんが、目が慣れてくると微かに光る発光生物の光が見えてきます。これは、潜水船が押し分ける海水中のマリンスノーに付着した微生物が光っているのです。幻想的でとても綺麗な光景です。
Q
・1回の調査でいくら位かかるの?
A
・母船「よこすか」の経費まで含むと年間10億円以上、その年の潜航回数はまちまちなので、それを割った金額となってしまいます。
Q
・恐くないですか?
A
・必ず浮く構造ですので、故障は心配ありません。しかし、捨て漁具に引っ掛かる等で浮上できなくなることが一番怖いことですが、それは操縦している自分の責任です。
Q
・中で食事はとりますか?
A
・9時間狭い船内に拘束されるので、必ず昼食(主にサンドイッチ)を一食分持ち込みます。また、非常食と水をしんかい2000で 3日分、しんかい6500で 5日分別途持ち込んでいます。
Q
・中は息苦しくないですか?
A
・3人が使った酸素(O2)は、使った量だけ純酸素を耐圧殻内に供給します。また、吐き出した二酸化炭素(CO2)はそれを吸収する性質のある水酸化リチウム(二酸化炭素吸収材)で吸い取るので、耐圧殻内の空気は地上と全く同じ環境です。また、非常食と水と非常用の酸素と二酸化炭素吸収剤をしんかい2000で 3日分、しんかい6500で 5日分別途持ち込んでいます。これらをライフサポートと呼びます。
Q
・一番めずらしい発見をした深海の生物は?
A
・1984年、世界で初めて沈み込み帯でのシロウリガイを相模湾で発見しました。当時、我々パイロットは、1977年に南米ガラパゴス沖でアメリカの潜水船アルビンが見つけたシロウリガイ群集のビデオを見ていたことから、同じ光景が目の前に現れたのでびっくりしました。
Q
・1回潜るとどのくらいの種類の生き物をとることができるのですか?
A
・クラゲや魚はスラープガンという装置を使って捕まえます。マニピュレータでスラープガンの吸い込み口をつかんで、捕まえたい生き物に近づけ、海水ごと吸い込みます。吸い込まれた生き物はキャニスタと呼ばれるボトルに入ります。キャニスタにはいくつかの種類があり、ボトルが 6本のものを 6連装キャニスタ、8本のものを8連装キャニスタと呼びます。基本的には 1本のボトルに 1つの生き物を入れるので、ボトルの数だけ生き物を捕まえることができます。
熱水噴出域にたくさんいる貝などは、マニピュレータで掴んで捕獲するので、種類や数はその時の研究者の指示に従います。
Q
・コックピットは本物ですか
A
・新江ノ島水族館に展示してあるコクピットは、訓練用シミュレータの物です。しかし、各メーターは臨場感を出すためと、実機の予備品を兼ねて本物を使っています。
Q
・しんかい2000の面はおもに何のざいりょうですか。
A
・耐圧殻;超高張力鋼、フレーム;純チタン、インバータ・VBT容器;チタン合金、外皮;FRP等です。
Q
・しんかい2000を動かすのにどのくらい時間がかかりましたか。
A
・しんかい2000は 1978年 10月に造船所で作り始めて、3年後の 1981年 10月に完成しました。1982年 1月から 1983年 7月上旬まで 67回の訓練潜航をおこない、1983年 7月下旬から本格的な研究潜航が始まりました。動かすのにかかった時間をまとめると以下のようになります。
作り始めてから完成するまで3年。
作り始めてから研究潜航を行うまで約 5年半。
・もし今展示中のしんかい2000を再度潜航させるとしたら、10名以上の熟練した整備員が必要で、また新しく製造する部品や交換部品も多数あることから 1年以上の時間と億単位の経費が必要でしょう?したがって、現実的ではありません。
夏の公開整備でいただいた質問の回答は以上です。
いかがでしたか。
とてもきれいな深海を見に行って感動してみたいですね!そんな素敵な深海にすむ深海生物たちと出会って、えのすいで感動を疑似?体験してもらえたら嬉しいです。感動が伝わるように私たちも頑張ります。
さて!ここでお知らせです!
年末の 12月 29日(木)に、第 9回しんかい2000公開整備の実施が決まりましたー!
何回も本物の深海を体験しているチームの皆さんのお話が聞ける機会は滅多にないですよ。しかも、しんかい2000のしくみを知りながら、普段は見られないところまで見られちゃいます。
皆さまのお越しを心よりお待ちしています。
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[2016/ 08/ 07 「しんかい2000」Q&A その 1]
[2016/ 08/ 11 「しんかい2000」Q&A その 2]
[2016/ 08/ 28 「しんかい2000」Q&A その 3]
[2016/ 11/ 24 「しんかい2000」Q&A その 4]