2008年06月03日

北海道奥尻島沖(7)潜航研究者の 1日 第一話

  • 期間:2008年5月29日〜 6月19日
  • 場所:北海道奥尻島沖
  • 目的:深海生物 調査採集
  • 担当:根本


「しんかい6500」に乗って潜航してきました!
実は去年の千島海溝に続き 2度目です。ですので今回は少し余裕があります♪
まあ、少しだけですけど・・・ 。
去年の潜航は緊張と興奮で完全に観光客みたいになっていましたから・・・ 。
ハッチが閉まると、「おお!・・・ ハッチが閉まった!むむ!急に外の音が何も聞こえなくなったぞ!耐圧殻は伊達じゃない!すげー!」とか、吊りあげられて着水した時も「おお!窓の外がチャプチャプしてる!着水だな!う~ん!結構揺れるじゃないか!酔いそうだぜい!」なんて、落ち着いたふりをしてはしゃいでました。

さて、船のようすや潜航など、全然お馴染みでないと思いますので、きょうの潜航を小説風味でお送りします。


朝、携帯の目覚ましの音で目がさめた。時間は 7時前。
もう少し早く起きる予定だったけれど、昨晩のスラープガンの準備やあす持っていくトラップの準備、一個前の同じ海域での潜航の写真のチェック、自分の潜航での作業内容の確認、きょう撮影した写真の整理などなどをしていて寝るのが遅れてしまったため起きそびれてしまった。
でも時間はあるので慌てなくても大丈夫だ。

これから、きょう持っていくトラップの餌をネットに詰める作業をおこなう。このトラップは、先日の小笠原航海で大活躍をした「大漁くん6」だ。
このトラップ、小笠原ではユノハナガニを大量に捕まえることに成功した優秀なペットボトルトラップである。製作費は 300円にも満たないが、改良に改良を重ねたスペシャルなトラップなのである。
餌は昨晩、厨房でいただいた鶏肉の生肉とボイルしたササミ、それと夕飯の残り物の魚の天ぷらのミックス。
前の千島海溝のときのトラップではチキンナゲットに深海魚がよく集まっていたので、今回も揚げ物は欠かせない!本当はたくさん使いたいところだけれど、採水をする研究者に「油はちょっと・・・ 、めちゃくちゃ困ります」といわれてしまったので、少しだけにしておく。

厨房のみなさまありがとうございます!と感謝をしながら冷蔵庫から取り出し、このときのために持ってきた排水溝ネットで包む。
インシュロックでギギギと留めて、トラップの中に突っ込んで固定。トラップのふたを閉めれば完成!
今回はマーカーにも餌をつけて持っていく。マーカーとは道しるべのことで、また同じ場所に戻ってくる際に使う。
重りと浮きでできていて、浮きには反射板が付いている。「しんかい6500」の強烈なライトを反射するので、暗くて広い深海でも遠くからでも発見できるのだ。

きょうの作戦は以下の通りだ。

1. 潜水して着底後すぐにトラップとマーカーを設置
2. その場を離れて調査に行く
3. 良いころ合いで戻ってきて、集まっているであろう生物を捕まえて浮上!


マーカーにも同じように排水溝ネットに餌を包んで、丸めてギギギと留める。これで出来上がり。あとは 8時から始まる「しんかい6500」の作動確認が始まる時に「お願いします!」と渡せばOK!
(ちなみに「しんかい6500」は略して6Kと呼ばれているので、以後 6Kと書きますね。)

出来たものを冷凍庫に入れて、とりあえず朝ごはんに行く。朝ご飯は乗船前に和食か洋食が選べる。
今回は洋食。トーストと目玉焼き、ソーセージ、サラダ、デザートのリンゴ。本当はコーヒーを飲みたいところだけれど、一応水分はなるべく取らないようにしないとね!
遠足のバスと一緒で出発したら、降りるまでトイレ休憩はないのだ。乗って降りるまで 8時間。結構長い。

ご飯を食べ終えたら、トラップのお願いに行きつつペイロードの最終確認をする。
ペイロードとは 6Kのオプションパーツのこと。研究者が持ち込んだ機材なんかもペイロードとして搭載される。
今回、ペイロードの主役は何といってもスラープガン&多連キャニスター!これは生物採集には欠かせない道具だ。例えるならご飯を食べるときのお箸みたいなもだ。
これがなきゃ始まらない!
このスラープガン&キャニスターは、6Kから電気を供給してもらって動く。これが正常に動くかどうかが調査のキモなのだ。

6Kチームと一緒に作動確認をおこなう。私は見ているだけ。6Kチームが無線で
「スラープガン、スイッチON」
『スイッチをONとした』
「回転を確認した。ではキャニスター回転」
『了解』
「 1番、2番、3番・・・、OK、異状なし」
といった感じで確認が進む。

終わると、確認してくれている副司令の千葉さんが
「珍しく絶好調だね」
とにやりと笑って私にいった。
普段は何かしら不具合があるらしい・・・ 。
逆にちょっと不安になってくる。でも絶好調なのだから心配しても仕方ない。
他のペイロードの設置位置と数の最終確認をして、確認終了。

あとは時間が来るまで何度もトイレに行って待つのみ。
6K内で、小の方はまあ良く携帯用トイレですることはあるけれど、大は未だかつて誰もやっていないそうだ。第一号にはなりたくない・・・ 。
こんな風に朝トイレに入っていると小学生の頃を思い出す。男子諸君はこの感じわかるかな?あの時も登校から下校までだいたい 8時間で時間は同じだ。
ちなみに女性の研究者は誰一人として携帯用トイレを使っていないそうだ。
パイロットは全員男性だから女性研究者は大変である。並大抵の努力ではないのだろうと思う・・・ 。
 
トイレに入っていると
「スイマースタンバイ!」
の放送があった。
こうなるとゆっくりしていられない。
きのう書けなかった航海日誌No.5をパパっと書いて、潜航地点のチャートとメモ帳をひっつかんで急いで 6Kのチームの部屋に行く。
ここで潜航服に着替え出発するのだ

つづく



きょうはこのへんでおわり。
これからきょうの潜航でとれたサンプルの写真撮影が残っているので・・・
この続きはまたあす(または今度??)

それではおやすみなさい。

[きょうの写真]
スラープガンと多連キャニスター

(C)JAMSTEC(C)JAMSTEC


海洋研究開発機構(JAMSTEC)YK08-07 「よこすか/しんかい6500」による北海道奥尻島沖 深海生物調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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