2008年06月04日

北海道奥尻島沖(8)潜航研究者の 1日 第二話

  • 期間:2008年5月29日〜 6月19日
  • 場所:北海道奥尻島沖
  • 目的:深海生物 調査採集
  • 担当:根本


こんにちは!
奥尻沖はきょうもよい天気!ベタ凪でした。湖のように水面がペットリしていました。とっても気持悪いです。嵐の前のなんとやらかもしれません。
きょうは夕方に左舷にイルカの群れが現れたそうです。こんなところにもイルカがいるんですね。びっくりです。
びっくりといえば、先日の私の潜航の時のパイロットの方が、うちの水族館の海獣類チームのトリーター岩崎さんの知り合いであることが判明しました。世間はせまいものですね~。

さて潜航研究者の 1日の続きです。


6Kチームの部屋「潜水調査船事務室」は、「よこすか」の格納庫の前方にある。
この部屋は常にアコーディオンカーテンで閉ざされており、私のような乗船者はまず立ち入らない部屋。
いつも閉まっているので中も満足に見ることもない。まさに6Kチームの基地といった感じだ。
そのカーテンを開けると、すでに潜航服に着替えたパイロットの大野さんとコパイロットの齋藤さんがいて、その横には司令と副司令が私を待ち構えていた。

ちょっと来るのが遅れたのもあって、急いで自分も潜航服に着替える。
「日本沈没」で主役俳優の方が着ていた潜航服だ。
着替えるというより、それをさらに着こむといった方がよい。
この服は、深海の冷たい海水で冷やされた船内でも、寒さに負けずに作業ができるように防寒仕様になっている。
さらには難燃性であり、静電気も起きにくいものになっているという。
船内の壁という壁は機械で埋め尽くされているから、静電気は大敵!
でも難燃性はよくわからない・・・火事・・・??
まあ!とりあえず燃えやすいよりは良いはず!

今回初めて知ったのだが、潜航服には 2種類ある。
私が知っているツナギタイプの他に、上下に分かれているものもあった。
でも着たのは通常のツナギタイプ。
ちなみに自己防衛策として、他にもTシャツ、えのすいポロシャツ、パーカー、えのすいジャンバーを着こみ、靴下は 3枚重ねばきしている。
足は油断しては駄目だ!ここから冷えてくる。
スキー用の靴下を近所のホームセンターで探したのだけれども、季節がら「清涼靴下」とか「爽快靴下」ばかりで売ってない。従って、仕方なくの 3枚重ね履きなのだ。
さすがに 3枚も重ねると清涼感や爽快感など全くなく蒸れまくりだけれど、妥協は禁物。これくらいで良いのだ。
おまけにネックウォーマーも装備した。首筋も暖めないとね。

今回かなり厳重に傍観しているのには訳がある。日本海の深海は尋常ではない冷たさだからだ。
海底の海水水温はなんと 0.2℃。冷蔵庫で冷えたキンキンに冷えた麦茶ですら 4℃前後、深海の海水に比べると温いといえる。この冷たさがチタン合金の耐圧穀を伝わって船内を丸ごと冷やすのだから大変!防寒は必須なのだ!

着終わって、パイロットとコパイロットの方と 3人で軽い打ち合わせをした後出発!
カーテンを開けてさっそうと外にでる!潜航日はちょっとしたヒーローなので、カメラやビデオが向けられる。照れくさいけれどうれしいものだ。

ちなみに「よこすか」の格納庫はめちゃくちゃ広い。105mある船の全長の半分くらいが 6K用の格納庫になっている。高さも 3階層ぶち抜きだ。
ここに 6Kが台車の上に鎮座し、潜航の時を待っている。私たちは階段で 2階部分に上がり、そこから橋を使って 6Kの上へ乗り移るのだ。
ビデオやカメラに愛想を振りまきつつ 6Kの上に降り立つ。
中への入口は 6Kの黄色い帽子の部分だ。あの帽子の中にハッチがあるのだ。

6Kの上に降り立ち、まず靴を脱ぐ。6Kの中はもちろん土禁だ。
黄色い帽子をまたぎ、ハッチにかかっている梯子を降りてゆく。中はすでにヒンヤリしている。これは耐圧殻内に結露が出ないように、クーラーで冷やして乾燥させているからだ。
クーラーはもちろん船内についているわけではなく、外にあり、黄色いホースで船内に冷風を送り出している。

3人が入り終わると梯子が取り外される。窓から外を覗くとみんながこちらを見上げているのがわかる。
潜水する前に、乗りこんだ潜航者は窓から顔を出すのが儀式となっている。そして外にいる人は丸窓からのぞいている潜航者の顔を外から撮る。これが潜航前のおやくそくなのだ。
窓の中からは、こちらを見上げて笑顔で写真をパシャパシャ撮っている研究者が見える。
それが終ると、深海底に到着するまで研究者の仕事は特にない。

その間もパイロットとコパイロットの方がテキパキと計器類のチェックをおこなっている。
その時、急に船体が揺さぶられたように動いた。 6Kを乗せた台車が船尾へ向けて動き出したのだ。
いよいよだ!

つづく

[きょうの写真]
格納庫

(C)JAMSTEC(C)JAMSTEC


海洋研究開発機構(JAMSTEC)YK08-07 「よこすか/しんかい6500」による北海道奥尻島沖 深海生物調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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