最後の調査は 2日の夜に実施されました。
実はどうしても目的の「海オタマ」が採れず、研究者と船とJAMSTEC本部とで相談が持たれ、今回特例的に夜の潜航が可能となったのです(通常は安全面などから、夜間潜航は実施されません)。
さて、問題の「海オタマ」、6月23日の日誌で少し紹介しましたが、他の海域でもいるにはいます。
が、その巣(ハウス)はとってももろく、しかも透明ですから、ある程度密度が高くないと、さすがのハイパーでもまとまった数をサンプリングすることはできないのです。
これまで 2回、北伊平屋で潜っても、少ししか見られませんでした。
さて、今回はそれより少し南、水深1600mの伊是名海穴「ドラゴンチムニー」で最後の勝負です。
結果は大成功! 1500mを過ぎる頃になると、おびただしい数の「海オタマ」が吹雪のように舞っています。
その幻想的な光景と、最後の最後で目的の生物に出会えた喜びで、研究者から
「感激するなぁ〜」
「この密度生まれては初めて見るよ・・・!」
といった声があがりました。
今回のハイパーは「海オタマ」採集装備になっています。
プランクトンネットを広げたまま吹雪の中をゆっくり航行し、プランクトン採集用容器「ゲートサンプラー」に納めていきます。
ゲートサンプラーは通常使用するビン(キャニスターボトル)よりも華奢な生き物をやさしく受け止めて採集することができます。
人がつまんだだけで壊れてしまう「海オタマ」を大事に抱えて、ハイパーは最後の潜航を無事こなしたのでした。
最後の最後で十分な数の「海オタマ」を得ることができた研究者のみなさんは、夜中であるにも関わらず、ニコニコ顔で顕微鏡をのぞいたり、専用の飼育装置に入れたりして各々の作業を楽しんでいました。
私もその一部を顕微鏡で見せていただきました。
遠めに見ると丸い頭に尾が付いた「オタマ型」ですが、その頭部には各臓器がすけて見え、体の各部を複雑に素早く動かす様は、何やら人知を超えた生命体のようでした。
「海オタマ」の飼育技術については、実験室レベルで一定の成果が上がっていますが、水族館での展示飼育にはいくつかの課題が残されています。
いつの日か、こんな面白い生物をみなさんにも生きてお見せできるように頑張らなくてはなりません。
[きょうの写真]
上/オタマ採集用の「ゲートサンプラー」
中/大量のハウス
(ハイパーのまわりの雪のようなもの全部)
下/海オタマの頭拡大
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)NT08-12 「なつしま/ハイパードルフィン」による沖縄トラフ 深海生物調査航海
新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。