2013年06月04日

青森県・姉沼(2)ミクロの世界へまっしぐら

  • 期間:2013年6月3日~2013年6月5日
  • 場所:青森県東北町・姉沼
  • 目的:沼の生物の調査・研究
  • 担当:伊藤


みなさまこんにちは。
青森はすっかり春ですね。
時期によっては大変寒いと聞いていたので、暖かくて助かりました。

小川原漁協の方に案内され、姉沼のほとりに到着です。
漁師さんがボートで待っており「すぐに出るぞ」。
何と、湖の定置網漁を間近で見せていただけるとのこと。
今では大変少なくなった漁業ですので、貴重な機会です。
ボートでドバーッと沼の真ん中を突っ切っていくと、不思議なアバ(浮き)の列が見えてきました。
漁師さんはおもむろにどんどん網を引き寄せ、1分もかからないうちに船上へ引き上げ、漁獲物とご対面です。
銀色に輝く小魚と、透き通ったエビがどっさりです。
急いで選別します。
今回の調査では、漁獲された魚をしばらく飼育する必要があるのです。

今の時期、イケチョウガイは繁殖の時期を迎えているはずで、沼の魚の体には、イケチョウガイの赤ちゃんがくっ付いているはずです。
さて、どういうことでしょうか?
イケチョウガイの赤ちゃん(グロキディウム幼生)は魚の寄生虫なんですね。
魚にくっ付いて栄養を吸い取りながら、貝の姿に変態していくわけです。
漁師さんにお礼を済ませ、大急ぎで北里大学内にセットした水槽に魚を移します。後は、魚の体から無事に変態を完了した稚貝が出てくるか、見守るだけです。
午後は大学の研究室にお邪魔して、学生さんに貝の赤ちゃんを探す技を伝授します。
残念ながら持ち帰る途中で死んでしまった魚があったので、顕微鏡で調べてみると、いました!

透明なパックマンのような赤ちゃんが、ヒレの縁にびっしりです。
先生も学生さんも初めて見るその姿に興味津々。
私は「付いてて良かった~っ」と内心ホッとしていました。

イケチョウガイの幼生は0.25ミリ。虫眼鏡では見えづらく、高倍率の顕微鏡では、画面いっぱい過ぎて数えにくい、という絶妙なサイズです。
効率よく観察しながら数えるには、倍率の低い実体顕微鏡が便利です。
その他、門外不出の小技?を伝授して、本日の作業終了です。

夜は、先生のお宅にお招きいただき、青森の特産物てんこ盛りの奥さまの手料理をご馳走になりました。
調査はあと一日、気を引き締めてかかりたいと思います。

小型定置網小型定置網

漁獲された魚。名物、フナのから揚げになります。漁獲された魚。名物、フナのから揚げになります。

漁獲されたカニ。名物ズガニ汁になります。漁獲されたカニ。名物ズガニ汁になります。

魚の鰭に寄生したイケチョウガイの稚貝魚の鰭に寄生したイケチョウガイの稚貝

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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