低気圧の接近で波が高くなるため、調査は中止。
調査海域から 120マイル程北にある三宅島へ向かい退避中です。
外は雨がふり、旧しんかい2000格納庫のシャッターは雨が吹き込まないよう降ろされています。
シャッターの隙間からは、薄暗い空と白波のたった海が上下しているのが見えます。
船内はこの見た目ほどは揺れず、まだ普通に歩くことも、パソコン作業もできる状態です。天気の回復が早ければ、あしたの午後から調査が開始できるかもしれないとのことです。
研究者のみなさんの仕事量は多く、朝は7時前からハイパードルフィンに搭載する機器のチェックをし、潜航中はハイパードルフィンのオペレーションルームで運行チームと深海の映像を見ながらサンプルの採集をおこない、夕方にハイパードルフィンが船の上に揚収されサンプルが上がってくると、その処理で作業は深夜にまで及びます。
きょうのような日は潜航ができなくて残念ではありますが、たまっているデータ整理や睡眠不足の解消などをおこなうことのできる貴重な時間になります。
飼育の方は、まだ潜航回数が少ないこと、採集するターゲットが絞られていること、地点間別採集などが少ないことにより、個別に飼育するものが少ないため比較的余裕があります。
今回は水槽を 7本と貯水タンクを 1本積んでいて、今現在 2本に「シンカイヒバリガイ」、 2本に「ユノハナガニ」が入っています。
飼育の方法はとてもシンプルで、 2℃に設定した低温室に水槽を並べ、貯水タンクと出入り口に近い水槽には 急速冷却用にクーラーを取り付けます。
水替えは基本的に朝と夕方の 2回おこないます。 1回の水替えで貯水槽の 200リットルの水は使い切り、そこで新たに汲みなおしてクーラーで急速に 4℃まで温度を下げます。出入り口の水槽にクーラーを取り付けるのは、人の出入りで暖気が入り込み冷えにくいためです。
濾過には期待せず、水を動かすためによく金魚を飼うのに使うフィルターのついたブクブクを投げ込んであるだけです。
船上では水槽に対して生物が多くなる傾向があり、「シンカイヒバリガイ」などの貝は採集されたストレスからなのか粘液や、“擬フン”と呼ばれる茶色いものをどんどん出すので濾過が追いつきません。
過去には強力な外部フィルターを付けたこともありますが、必要とするスペースの割には効果薄で、狭い低温室ではメンテも大変、複雑なぶん、事故も多いので最近は持っていきません。
水替えのタイミングは非常に大切で、飼育水が濁り出すと死亡する個体が出はじめ、その死亡した個体が水を汚し、さらに死亡する個体が出るという負のスパイラルが起きだし、あっという間に水槽丸洗いという水槽崩壊状態に陥ります。
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
本調査は、JAMSTECが東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです
JAMSTEC(海洋研究開発機構)NT14-06「なつしま/ハイパードルフィン」による複数の海山カルデラ周辺における底生生物群集調査
新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています