2020年09月19日

江の島 (3)ばらまきアズキが動き出す

  • 期間:2020年9月19日(土)
  • 場所:江の島
  • 目的:潮間帯と陸域のカニ類の調査
  • 担当:伊藤


みなさま、こんにちは。
最近ちょっと腰痛が辛いのですが、信頼する整体の先生から習ったセルフケアの甲斐あり、何とか動けそうです。
そんな病み上がりの私の相棒は、当直明けで眠気マックスの加登岡トリーターです。
今回は二人で、島の西岸の地点を調べます。

ここら辺は、境川の影響をふんだんに受けて塩分は低いのに、波の影響はしっかり受けるという、考えてみればかなり特殊な環境です。
さらに陸側に目を向けると、南岸に比べて崖の勾配が緩やかなため、土がたまりやすく植物が目立ちます。
岩のところどころにまとまった土。これがポイントです。


江の島で最も沢らしい沢。

最初に調べたのは小さな沢です。
江の島では内陸部から絞り出された淡水が滴っている場所があることをお伝えしましたが、この場所はそれが顕著で、きちんと「川っぽく」なっているのです。
ここは、初回の下調べで目を付けていました。
さっそく調査に入ると、カニより蚊の数がすごい!
これは想定外でした。久々の獲物である我々に襲い掛かります。
加登岡トリーターは肌に泥を塗り、原住民ばりの対策をはりますが、フバー〇ほどにも効果なし。
私は調査に集中して痒さを忘れる作戦です。
沢すじに沿って石を返したり、落ち葉をどけたりしていくと、南磯でも見られたベンケイガニ類に混ざり、サワガニが見つかります。


ダッシュするサワガニ。

江の島にサワガニがいることはずっと昔からよく知られていますが、周りを海と都市部に囲まれる環境で見られるのは珍しいことです。
二の腕をぼこぼこにされながらアプローチした甲斐がありました。

次に調べたのはそこより海側、小さな谷に砂浜から転石、泥っぽいタイドプールまで変化に富みます。


イワガニ。きちんと観察したことあります?

岩の隙間には、俊足でおなじみのイワガニが隠れています。
水族館でも大々的に展示されることが少ない種だと思っています。
人気の遊び相手であるイソガニと、大きくて美しいアカテガニの間の、目立たないキャラ扱いされがちです。
せっかくなので少し連れ帰って、当館の干潟水槽で見ていただくことにしました。かっこいいですよ。

次に転石をめくっていきます。
多くのカニが慌てふためき走り去ります。
ほとんどがイソガニとヒライソガニですが、ちょっと大きめの石をめくると、妙にもぞもぞとした赤いカニがまとまって見られました。


ヒメアカイソガニ。何匹いるでしょうか?


アップで。アズキのよう。

ヒメアカイソガニです。
江の島では生息地点が極めて限られるレア種という認識でしたが、今回あらたな多産地点を発見です。
色もそうですが、アズキのような質感とたたずまいが大変私好みのカニで「展示したい種」のトップ10に入ります。
実際に何度か試みていますが、いかんせん隠れる性質が強すぎて、その魅力を最大限に引き出してお見せするのが難しいのです。
生き生きとした本種の姿を見られるのは、フィールドワークの醍醐味です。

最初は痒くて大変でしたが、今回もなかなか面白い調査でした。
サワガニとイワガニが目と鼻の先で見られる「違和感のある現実」に感動しますね。

こうしたフィールドワークの成果をこれからチクチクとまとめていきます。
標本の写真を撮影したり、腐らないよう薬液に漬け込んだり、ノートに書き込んだ情報をPCに落とし込んだり、なかなか大変です。
その辺のことも、今後どこかで紹介できたらと思っております。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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