2020年12月09日

西七島海嶺、中マリアナ海嶺・西マリアナ海嶺北部 調査航海(15)

  • 期間:2020年11月25日(水)~12月12日(土)
  • 場所:西七島海嶺、中マリアナ海嶺・西マリアナ海嶺北部
  • 目的:新たな海洋保護区(沖合海底自然環境保全地域)/管理のための深海を対象とした生物多様性モニタリング技術開発/日本周辺における沖合自然環境保全のモニタリング調査
  • 担当:八巻


航海15日目 10年ぶり ハオリムシの壁

みなさんこんにちは!八巻です。
ついにやってきました!最後の調査海域です。
こちらの海山の頂上にあるカルデラ内では、今も火山活動が活発で、熱水噴出域となっています。

実は私、10年前にもこの熱水噴出域に来たことがあります。
とても生物量が高い海域として知られておりますし、何より私が学生時代からずっと関わってきたサツマハオリムシの一大棲息域ですから、とても楽しみにしていました。
サツマハオリムシはゴカイの仲間ですが、口や消化管がなく、体内に共生させるバクテリアが硫化水素を利用して作る栄養に完全に依存している不思議な動物です。
ですから、このような硫化水素が豊富な熱水噴出域などを生息域とします。

いざ潜航!
海山の頂上が近づいてくると、あたかも雲の中に入ったかのように白濁してきました。


これは海底から噴き出す熱水に含まれる成分によるものです。
そして立ち込める白い雲を越えると、ついに見えてきました!一面が白いカニだらけの海底です。


このカニはユノハナガニといい、熱水噴出域に固有な種です。
それにしてもこの生物量は圧巻です!
初めて熱水の生物群集を発見した方の驚きは想像に難くありません。
そしてカルデラの中央へ向かい、サツマハオリムシの大群集を観察するはずでした。
しかし、あたりに目立つのは海底に横たわったハオリムシの棲管ばかりで、行けども行けども小さな群体があるのみ。
よくよく見れば出現生物も異なります。
目に入るのはユノハナガニとイデユウシノシタ、そして時折現れるサツマハオリムシだけで、以前はたくさん見ることのできたトウロウオハラエビやオオマユイガイがほとんど見当たりません。


茶色い棒状のものが横たわる棲管

10年前に一緒に来ていた研究者の方も驚いていました。おそらくこの 10年に火山活動の変化などの大規模なイベントがあり、環境が大きく変わってしまったのだろうということにおちつき、周囲で採水や、生物サンプリングを済ませました。
そして今回は、海山全体を調べるため、まだ見たことのないカルデラの外、海山の外壁へ出るコースへと向かうことにしました。
カルデラの端近くへ行き、ROVの高度を上げ、カルデラを乗り越えようとしたその時、なんと頭上からハオリムシの大群集が現れたのです!


さらに高度を上げても同じことが何度も起こりました。
おそらくカルデラの内側の壁に無数のハオリムシが付着しているという状況です。
これには本当に驚きました。
これまで他にない規模のハオリムシの大群集がなくなってしまったと思っていたところに、それがまるでかすんでしまう大規模な群集が、すぐ近くに広がっていたのですから。
まさに井の中の蛙だったわけです。

海山が支える生物相に改めて感動を覚えた、そんな潜航でした。


JAMSTEC(海洋研究開発機構)KM20-10C かいめい/KM-ROV 新たな海洋保護区(沖合海底自然環境保全地域)/管理のための深海を対象とした生物多様性モニタリング技術開発/日本周辺における沖合自然環境保全のモニタリング調査

新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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