2024年05月17日

D-ARK 航海 (11)
5月16日、5月17日 九州パラオ海嶺 KM-ROV、クラムボン、ラストダイブ!

  • 期間:2024年4月27日(土)~5月19日(日)
  • 場所:南大東島周辺海域、九州・パラオ海嶺
  • 目的:深海石灰岩洞窟における遺存種の把握とその分類学的研究
  • 担当:八巻


みなさんこんにちは!八巻です。

九州パラオ海嶺北高鵬海山の調査は5日目、6日目となり、本日が最後の調査日です!

5日目の 5月 16日は、KM-ROV のラストダイブ、北高鵬海山の西側にある海陵の水深約 500~600mで潜航しました。
6日目の本日 5月17日も、前日の KM-ROV での潜航の際の浮上ポイント近くでクラムボンを用いて潜航、ラストダイブとなりました。

今回調査をおこなってきた北高鵬海山は山頂に直径5kmほどの平頂部があり、その西側には、頂上付近がでこぼこした海陵があります。
今回は、その北高鵬海山西海陵の山頂部にある3つの小山を登ってみることにしました。

海底に到着、少し進むと、この海陵は生物相がとても豊かであることがすぐに分かりました。
魚類相も、これまで見たことのあるものに加えて他では見なかったような種もいます。
ギンザメの仲間は深海で比較的頻繁に見る気がしますが、今回の調査ではここで初めて観察しました。


ソコダラ科の一種


キンメダイ


ソトオリイワシ

ギンザメ科の一種ギンザメ科の一種


そして私の中では海山調査定番のセンジュエビの仲間に、今回も出会うことができました!
普通底曳網漁などで漁獲されるセンジュエビ類は砂泥底にすんでいますが、今回のセンジュエビ類はいつも海山の岩の上にいます。
もしかしたら違う種かもしれませんが、遠い昔、私が学生の頃に乗った調査航海で、小笠原諸島よりさらに南にある日光海山周辺で初めて見たときも、同じように岩の上にいました。
そして2020年の海山の調査航海でも、同じように岩の上にたたずんでいました。
3度目となる今回、やっぱりいたか! と思うほど、もはや私の中ではセンジュエビと言ったら砂泥底ではなく岩の上、なのです。

センジュエビ科の一種センジュエビ科の一種


今回何度か登場しているスナギンチャクの仲間。こちらはカイメンの表面にたくさんついています。一見するとイソギンチャクのようですが、触手の付き方がイソギンチャクとは違います。
また、大抵のスナギンチャクはこのように群体でいるので、そこからもイソギンチャクとの違いを感じます。

スナギンチャク類スナギンチャク類


二つ目の小山のてっぺん付近では、オーストンガニの雌雄に出会いました!
遠目から見ると脱皮しているように見えたのですが、カニ類が専門の研究者の方が、これは雌雄じゃないかな?と言っているまさにその時、脱皮殻だと思っていた右側の個体が動き、みなで驚きました!
それにしても専門家の方の観察眼はさすがです!

雌雄で発見したオーストンガニ雌雄で発見したオーストンガニ


三つ目の小山の山頂付近はこれまでとは違った光景が広がっていました。
青と紫、そして黄色のヤギ類が何とも言えない絶妙なバランスで生えているのです。
そのとてもきれいな色合いに魅せられ、つい深海にいることを忘れ、草原を進んでいるかのような感覚すら覚えます。

ヤギ類の草原ヤギ類の草原

残念ながら、ヤギ類の草原に着いたころ、KM-ROV は浮上時刻となってしまいました。


そして本日 5月 17日、ヤギ類の草原に改めてクラムボンで潜航することになりました。
午前中のみのショートダイブで、すぐに横須賀に向けた回航に入る予定です。

クラムボンで見る草原はまた視点が違って趣があります。
よく見ると、テヅルモヅルの仲間が高い頻度で確認できました。
下の写真の中央左に2個体がからみついています。

クラムボンから見たヤギ類の草原とからみつくテヅルモヅルクラムボンから見たヤギ類の草原とからみつくテヅルモヅル


ヒトデ類が何かに群がる不思議な光景も見ることができました。
おそらく餌となるものに群がっているものと思われますが、こんなにたくさんのヒトデ類が自然に集まってるところを初めて見ました!

何かに群がるヒトデ類何かに群がるヒトデ類


今回の潜降も、観察やサンプリングを進めているうちに浮上の時刻となり、今回の調査を通してのラストダイブが終了となりました!

あしたは一日中回航、あさっての朝9時に JAMSTEC へ入港、荷降ろしとなります。
本当にあっという間の 21日間でした。
ここまでの長い航海日誌にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

海洋調査は天候との戦いです。大抵の調査では1~2割は荒天待機を余儀なくされ、悪いと全く調査ができなくなる場合もあります。
ところが、今回は全調査日程を通じて荒天待機0回!
予定通りはもとより、予定以上の調査をおこなうことができました!

今回も、深海に広がる本当にかけがえのない光景を目の当たりにしました。
この日誌や展示でみなさまにお伝えできるのはごくわずかですが、一端でもその魅力を感じていただけたら幸いです。

海底広域研究船「かいめい」のキャプテンはじめ乗組員の方々、無人探査機「 KM-ROV 」の運航長はじめ運航チームの方々、そして首席研究者はじめ乗船者の方々、本調査に関わる全ての方々に感謝の意を表して、今回の航海日誌を閉じさせていただきます。

ありがとうございました。


作業をしてくださる「かいめい」の乗組員の方々



本プロジェクトはオーシャンショット研究助成事業の助成を受けたものである。
※オーシャンショット研究助成事業は日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されている。

・JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)KM24-03「かいめい」/「KM-ROV」 D-ARK 航海
・新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究をおこなっています。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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