2018年11月17日

沖縄トラフ伊平屋北海丘深海調査航海(3)航海日誌 3日目

  • 期間:2018年11月15日~11月20日
  • 場所:沖縄中部トラフ
  • 目的:多系統群から探る普遍的な極限環境適応機構の解明 / 悪玉細菌群の制御を目的をした広宿主性ウイルスの探索
  • 担当:杉村
調査船「かいれい」からの朝日調査船「かいれい」からの朝日


天候は、快晴とはいきませんでしたが、少々曇り空がちで所々に晴れ間が、といったところでしょうか。
“かいれい”は、きょうも心地よく揺れています。
中には少々気分を悪くされた研究者の方がいたようでしたが・・・ 。


無人探査機「かいこうMk‐lV」: 着水

きょうとあすは、私たちとは別の研究グループのみなさんの潜航調査です。
ターゲットは、水深 2,000m付近の海底。
その海底には、十年ほど前に研究のために沈設した鯨骨があります。
最初のミッションは、その鯨骨を探すところから。
沈設後、何度か訪れているとのことですが、そのたびに見つけられるかドキドキだそうです。
水深 2,000mに到着すると、照明に当たって、濃紺から緑色に変化する海中と黄土色に染まった海底が広がる世界が“かいこう”から送られてきます。
海中には、クラゲの仲間やクサウオの仲間と思われる深海魚がぽつりぽつりと姿をみせてくれます。
きのうの熱水噴出域とはうって変わった静寂の世界です。
しばらくすると、画面の奥の方に白く光る物が見えてきました。
それは・・・ 鯨骨に取り付けたマーカーです。
みんな安堵の表情でメインモニターを見つめていました。
私もその中の一人でした・・・

海底には、しっかりと鯨骨が沈んでいました。
沈設してから何年もかけて、いろいろな生物に分解されてきたのでしょう、設置するときに固定していたであろうロープがユルユルになっていました。
少し小さくなった骨の上には、真っ白な体のシンカイコシオリエビの仲間が何匹か付いていました。
時折びっくりしたコシオリエビが、腹部をイセエビのように小刻みに動かして、ピッピッピッピッと鯨骨から離れて泳いでいきます。
よくもまあ、広大な深海の海底でここにたどり着けるものだと思います。
彼らはいったいどうやって、深海の広大な海底にあるこの鯨骨を見つけたのでしょうか?
ここに来る途中には何も身を隠すものが無かっただけに、この光景を実際に目の当たりにするとますます謎が深まります。

鯨骨をハイヴィジョンカメラでよく観察すると、表面には他にも小さな生き物たちが付着しているようでした。
広大な深海の海底には、鯨骨をはじめとして沈木などが沈んでいます。
そういった沈没物にどのような生物が付き、どのように利用しているのか、またどのように変化していくのか、こういったことをさまざまな研究者のみなさんが調査をしているのです。

鯨骨の調査の後、大型の生物などを探索しに再び静かな海底を航行し始めました。
濃い赤紫色をしたユメナマコの仲間が海底にじっとして・・・ と思った瞬間、ぶわっと海底からジャンプして泳ぎ出しました。
なんともゆっくりな動きですが、水深 2,000mの高水圧下では必然的にこういう動きになってしまうんでしょうけど、やっぱり優雅でした。
その後も浮遊していたり、海底にじっとしているナマコの仲間に何度か出会うことが出来ました。
ここで、生物探索のユメ(夢)の時間は終わり、“かいこう”は離底しました。


無人探査機「かいこうMk‐lV」: 揚収

今夜は、研究者のみなさんが、揺れる船の上で顕微鏡とにらめっこをしながら回収した沈設物や泥などのサンプルの中から生物たちを探しています。
夜遅くまで生物探しは続きそうです。
あす、みなさんからの成果を聞くのが楽しみです。


研究の合間に・・・

船は、既に次の調査地点に到着しています。
そして、あすは、最後の潜航日です。
海が荒れないことを祈りたいです。
ではまた。


JAMSTEC(海洋研究開発機構)KR18-15「かいれい」/「かいこう」 「多系統群から探る普遍的な極限環境適応機構の解明/悪玉細菌群の制御を目的をした広宿主性ウイルスの探索」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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