2018年11月18日

沖縄トラフ伊平屋北海丘深海調査航海(4)航海日誌 4日目

  • 期間:2018年11月15日~11月20日
  • 場所:沖縄中部トラフ
  • 目的:多系統群から探る普遍的な極限環境適応機構の解明 / 悪玉細菌群の制御を目的をした広宿主性ウイルスの探索
  • 担当:杉村
薄明薄明


「かいれい」上空は少々雲が多く、遠くの雲の間から太陽の光が差し込むような天気でした。

本日の潜航地点は、南西諸島沖の水深 5,000mの海底です。
着底までは約 3時間を要するため、これまでより 1時間前倒しでの準備です。
AM 5:30に居室のベットから出て、えのすいの作業着に着替えて”かいこう”のあるデッキに、6時前には降りていきました。
既に運航チームのみなさんは、準備を始めていました。
デッキから外を見ると、遠くの空がうっすら白く見えました。
これが、夜明け前の薄明(はくめい・はくみょう)というやつですね。
沖縄の朝は、寒くもなく暑くもなく爽やかでした。

さあ、深海 5,000mに向けて!

“かいこう“が目指す 5,000mへは簡単には行けない世界です。
何が簡単ではないか・・・
「水圧」という単語がみなさんの頭の中には、最初に想い浮かびそうですが、実際には「海水」そのものの存在が簡単ではないんです。
「水圧」は、その圧力に負けない素材や構造のものを作れば克服することはできます。※当然、これはこれで、簡単ではないのですが・・・ 。
それよりやっかいなのは、海の中では電波が使えないことです。
我々は、日常ごく普通に何の疑いもなく、携帯電話や車のナビシステムを使っていますよね。
海の中では、その携帯電話やナビシステムが使えない・・・
つまり、“電波”が使えないということです。
では、海の中での通信手段はというと・・・ “音波”を使います。
※最近では光などを使った新しい通信方法も開発されていますが、その多くはまだ開発段階です。
現在の日本の技術では、音波で位置情報や音声・画像までも送ることができ、しんかい6500では実際に使われています。
・・・“えのすい”で展示している「しんかい2000」も音波で通信していました・・・
音波での通信は深くなればなるほど、通信のタイムラグが長くなり、探査船などから送られてくる位置情報にはズレが生じやすく、位置を正確に把握することが難しくなってくるそうです。
コンピューターも、それを考える人も進歩しますが、それでもまだまだ壁はあるようなのです。

なぜ? このような話をしたかというと・・・
実は本日の潜航、最終的に目的の海底に辿り着くことができなかったのです。
海水の壁は、思った以上に高かったのです。
今回のような水深ではなおさらなのでしょう。
5,000mもの深さになると、海況や海流の影響を受け、さらに水深による位置情報の乱れやズレが大きかったようでした。
何も無い海底では、位置情報だけが頼りですから・・・。
実際に計器を観ているとビークルの表示位置があっちこっちにバラバラに表示されていました。

本当に「深海」は、宇宙に行くより難しい!!

5,000mの世界は、きのうの 2,000mよりさらに静寂の世界でした。
“かいこう”が航行する間、モニターに映し出される泥と泥岩で覆われた海底に目を凝らしていましたが、ユメナマコと思われるナマコの仲間が 1~2個体と、小型のクシクラゲの仲間を 2~3個体、魚類?と思われる生物をぽつりと見たくらいでした。
マリンスノーは非常に少なかったです。
昔の人たちが、「深海に生物が存在しない」といった理由が、何となく分かるような気がしました。
おとといの熱水噴出域の生物の豊富さが嘘のようにさえ感じました。


5,000mの海底

研究者のみなさんは、水深 5,000mの泥や海水を採取して泥の中の小さな生物や微生物を調べられていました。
どんな生き物がいるのか、これも楽しみです。

きょうは、深海調査の厳しさと難しさを改めて感じた1日でした。
これから夜にかけて、我々のいる海域は海況が悪化するということで、船は移動を始めました。
夜から朝にかけて沖縄本土の近くに到着の予定です。

それでは、またあした。


Aフレームの合間から夕日が・・・


5,000mからお帰り・・・ ブ○メン!


JAMSTEC(海洋研究開発機構)KR18-15「かいれい」/「かいこう」 「多系統群から探る普遍的な極限環境適応機構の解明/悪玉細菌群の制御を目的をした広宿主性ウイルスの探索」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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